尖圭コンジローマアイキャッチ画像

尖圭コンジローマ、性器や肛門にカリフラワー状のイボ

尖圭コンジローマは、性器や尿道、肛門にブツブツ(イボ)ができる性感染症です。 性行為によって粘膜同士が接触することでウイルス感染して発症します。イボは放置すると増えて合体し、カリフラワーや鶏のトサカのような形になります。

放置するとイボがどんどん増えて大きくなり治療が困難になっていくので、早めの治療が大切です。 治療法には塗り薬(ベセルナクリーム)を自分で塗る方法と、外科治療(凍結、焼灼、切除)があります。(治療に関して詳しくは尖圭コンジローマの治療ページをご覧ください。)

塗り薬は跡が残らず再発も予防できますので、お医者さんで第一選択とされています。 塗り薬で治らないような場合やイボが重症化しているような場合は、外科治療、もしくは外科治療と塗り薬の併用が行われます。

尖圭コンジローマとは

尖圭コンジローマ引用画像01

出典:写真で見る尖圭コンジローマの症状ー尖圭コンジローマは完治するの? | メディカルノート

尖圭コンジローマは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の6型と11型によるウイルス性の性感染症です。HPVは日本語でヒト乳頭腫ウィルスと呼ばれています。名前の由来は、このウイルスに感染すると皮膚に乳頭のようなイボができるためです。HPVは180種類以上の型があり、どこにでもいるありふれたウイルスです。
このうち尖圭コンジローマやその他の部位にできるイボ(尋常性疣贅)と関係しているのは、ローリスクHPVと呼ばれる危険性の低いタイプです。一方でハイリスクHPVは男性の場合は陰茎がん、女性の場合は子宮頸がんと関係している危険性の高いタイプです。

尖圭コンジローマ自体はイボと同じローリスクHPVですが、感染したHPVの中にハイリスクHPVが潜んでいる事もあります。
感染しても必ずしも発症するわけではなく、免疫力が低い場合に3週間~8ヵ月の潜伏期間を経て症状が出ます。潜伏期間が長いため、発症に気づきにくく、原因の特定が難しくなります。

尖圭コンジローマ感染者グラフ01

尖圭コンジローマの感染者数は数年ごとに増減を繰り返していますが、ここ2~3年で再び増加しています。
特に男性患者の割合が際立って増加しているのが特徴で、2019年(令和元年)には男性患者数として初めて性器ヘルペスを上回りました。

尖圭コンジローマの症状

尖圭コンジローマ肛門引用画像01

出典:写真で見る尖圭コンジローマの症状ー尖圭コンジローマは完治するの? | メディカルノート

尖圭コンジローマは症状の特徴として、先が尖った乳頭状のイボが性器や肛門、尿道にできます。イボの大きさは2~3ミリから指の先ぐらいで、色は白、ピンク、褐色(黒ずんだ茶色)、黒など様々です。

イボは段々と増えていき、合わさってカリフラワーや鶏のトサカのような形になるのが特徴です。自覚症状はほとんどありませんが、イボが急速に成長した場合に痛みやかゆみを覚えることがあります。

男性の場合は性器をすぐに目視できるため見た目で気づきますが、女性の場合は性器を目視することはあまりないので、歩いている時や下着がこすれた時などに違和感を覚えて気づくことが多いです。

男性が尖圭コンジローマを発症する部位

尖圭コンジローマ男性引用画像01

出典:写真で見る尖圭コンジローマの症状ー尖圭コンジローマは完治するの? | メディカルノート

尖圭コンジローマ男性引用画像02

出典:Management of External Genital Warts – American Family Physician(英語)

尖圭コンジローマ男性引用画像03
肛門周辺に発症した尖圭コンジローマ

出典:Management of External Genital Warts – American Family Physician(英語)

男性の場合、尖圭コンジローマは以下の部位に発症します。

尖圭コンジローマ男性症状引用

出典:尖圭コンジローマセルフチェック[男性] – イボイボ コミュニケーション スタジオ
  • 亀頭の先端部分
  • 冠状溝(カリ首)
  • 包皮内外版(包皮の内側や外側)
  • 陰のう
  • 会陰(陰のうから肛門にかけての間)
  • 尿道口および尿道内
  • 肛門の周りおよび肛門内

ホモは肛門にも感染するって事だね。イボ痔と見分けがつかなそうだなぁ…

いぼ痔は全く別の疾患であり、出血や痛みを伴いますのですぐわかります。

女性が尖圭コンジローマを発症する部位

尖圭コンジローマ女性引用画像01

出典:写真で見る尖圭コンジローマの症状ー尖圭コンジローマは完治するの? | メディカルノート

尖圭コンジローマ女性引用画像02

尖圭コンジローマ女性引用画像03

出典:女性の尖圭コンジローマの症状 | メディカルノート

女性の場合、尖圭コンジローマは以下の部位に発症します。

尖圭コンジローマ女性症状引用

出典:尖圭コンジローマセルフチェック[女性] – イボイボ コミュニケーション スタジオ
  • 大小陰唇(だいしょういんしん)
  • 膣前庭(ちつぜんてい)
  • 会陰(えいん:性器と肛門の間)
  • 膣(ちつ)
  • 子宮頚部(しきゅうけいぶ)
  • 尿道口および尿道内
  • 肛門の周りおよび肛門内

あそこの状態なんて自覚症状がないと目で見る事なんかないからなぁ…

女性の場合は、歩くたびにイボが周囲と擦れ、違和感を感じて気付く場合が多いです。

尖圭コンジローマと似てる症状の疾患

フォアダイス引用画像01

出典:亀頭のブツブツ除去|エーツー美容外科

尖圭コンジローマは、症状が似ている疾患がありますので間違えないように注意しなければなりません。もしご自身の判断では他の疾患と見分けがつかないような場合は、男性であれば泌尿器科や皮膚科、女性であれば婦人科を受診しましょう。

フォアダイス

フォアダイス引用画像02

出典:フォアダイス – Wikipedia

陰茎の腹部や側面に白色もしくは薄い黄色の小さなブツブツできる症状は、フォアダイスと呼ばれています。見た目は尖圭コンジローマの初期症状と似ていますが、疾患ではなく体質による生理的な現象です。

フォアダイスは本来陰毛の根本にある皮脂腺(脂肪)が陰毛以外の部位にできて透けている状態であり、成人男性の65%に見られるありふれたものです。
体に害はないので心配はいりませんが、見た目が気になるという方は外科手術によって除去することができます。

フォアダイスと同様に無害な症状として、真珠様小丘疹と包皮腺(タイソン腺)がありますが、これらを総称してフォアダイスと呼ぶこともあります。

真珠様陰茎小丘疹(男性)

真珠様陰茎小丘疹引用画像01

出典:真珠様陰茎小丘疹 – Wikipedia

真珠様陰茎小丘疹および尖圭コンジローマ引用画像
尖圭コンジローマ(上)と真珠様陰茎小丘疹(下)

出典:Management of External Genital Warts – American Family Physician(英語)

亀頭の付け根にある冠状溝(カリ首)に沿って白くて小さいブツブツができる症状は、真珠様陰茎小丘疹と呼ばれています。症状の見分け方として尖圭コンジローマが亀頭先端部分や包皮にもブツブツができるのに対し、真珠様陰茎小丘疹ができるのは冠状溝のみです。

ブツブツの正体はフォアダイスと同様に皮脂腺(脂肪)ですので、フォアダイスの一種に分類されることもあります。成人男性の20%に見られ、包茎の男性に多いのが特徴です。包茎の状態で皮脂腺から皮脂が分泌されると恥垢が溜まり、悪臭や不衛生による細菌感染の原因となります。 真珠様陰茎小丘疹は外科手術によって除去することができます。

包皮腺(男性)

包皮腺引用画像01

出典:包皮腺-case01 | 青山セレスクリニック

包皮小帯(ほうひしょうたい:裏スジ)の両脇に小さなブツブツができる症状は、包皮腺(タイソン腺)と呼ばれています。フォアダイスと同様に皮脂腺によるブツブツですので、フォアダイスの一つにカテゴライズされることもあります。包皮腺は恥垢を分泌する器官ですので、この周辺に恥垢が溜まりやすく、悪臭や不衛生による細菌感染の原因となります。
包皮腺は外科手術によって除去することができます。

ボーエン様丘疹症

ボーエン様丘疹症引用画像01

出典:ウイルス性疣贅(ボーエン様丘疹症)|電子コンテンツ|日本医事新報社

陰部(性器、会陰部)や肛門付近に褐色(黒ずんだ茶色)や黒色の平べったいイボができている場合、ボーエン様丘疹症と呼ばれる疾患の可能性があります。
ボーエン様丘疹症は、尖圭コンジローマと同じHPV(ヒトパピローマウイルス)による性感染症ですが、ウイルスの型が異なります。尖圭コンジローマがローリスクHPV(6型、11型)であるのに対し、ボーエン様丘疹症はハイリスクHPV(主に16型、他にも18型、31型、33型など)が感染します。ボーエン様丘疹症を長期間にわたって放置し続けると、ボーエン病(陰部にできたものはケイラー紅色肥厚症)を経て有棘細胞がんと呼ばれる皮膚がんに悪化します。
ボーエン様丘疹症はベセルナクリームの適応疾患ではありませんので、病院を受診して外科治療をしてもらいましょう。

腟前庭乳頭腫症(女性)

女性の膣前庭および小陰唇の内側に、1~3ミリ程度で乳頭状もしくは棍棒状のブツブツができる事があります。これは腟前庭乳頭腫症と呼ばれる生理現象で、別名「妖精のひだ」とも呼ばれる正常な体の変化です。
尖圭コンジローマとの違いは、ブツブツの先端が尖っておらず規則性がある、左右対称にできる、内部に血管が見えないといった点です。腟前庭乳頭腫症は原因が詳しく分かっていませんが、性交経験のない女性に多く見られます。

扁平コンジローマ

扁平コンジローマ引用画像01

出典:「近年治療が進歩した尖圭コンジローマ」 | 医療法人社団 予防会 – コラム・ニュースページ

扁平コンジローマは性器や肛門の周辺に平べったいイボができる性感染症です。尖圭コンジローマと名前が似ていますが、梅毒の第二期に出る症状であり、全く別の疾患です。
症状の特徴として軽い痛みやかゆみを伴います。梅毒は発症してから経過する期間によって症状が4段階で重症化していきます。扁平コンジローマを発症する前に必ず、梅毒の第一期として初期硬結(感染部位に小豆~指先ぐらいの大きさのしこりができる)が発症し、ついで硬性下疳(初期硬結の部位を中心にただれてくる)が発症します。

伝染性軟属腫

伝染性軟属腫は、いわゆる水イボのことです。顔の水イボは子供から感染しやすい皮膚疾患ですが、大人になると性感染症として陰部にも発症します。
症状として、大きさは2~5ミリで薄紅色(ピンク)のイボがポツポツとできます。イボはドーム状で光沢があり、よく見ると中心にヘソのような凹み(中心臍窩)があるのが特徴です。
ウイルス性の皮膚疾患ですが良性のイボであり、自然治癒するので治療の必要はありません。気になる方は病院で除去してもらうことができます。

尖圭コンジローマの原因と感染経路

尖圭コンジローマの原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)6型および11型の感染です。感染経路は主に性行為による性器の接触で、粘膜や皮膚の小さな傷からウイルスが侵入して感染します。
主に膣性交、肛門性交(アナルセックス)、オーラルセックスが感染経路となりますが、まれにアダルトグッズからも感染する事があります。膣性交によって性器および尿道に、肛門性交によって肛門の周辺および肛門内にそれぞれ感染します。オーラルセックスによって口へと感染し、その口で別のパートナーにオーラルセックスをして感染させることもあります。

コンドームをつければ感染を防げるかというと、尖圭コンジローマの感染部位はコンドームがおよばない広範囲におよぶ事もあるため、必ずしも防げるとは限りません。

感染しても誰しも発症するという訳ではなく、免疫力が低下している場合に潜伏期間を経て発症します。潜伏期間は3週間~8ヶ月(平均2.8カ月)とされており、発症した頃には感染した時の状況をはっきり思い出せない場合が多いです。
このため、感染した時期や誰から感染したかを特定するのが困難となります。

尖圭コンジローマを放置すると

尖圭コンジローマを治療せずに放置していると、イボがどんどん増え続けて大きくなり、広範囲におよんでいきます。
性器から会陰部を経て肛門におよぶと、薬では効きにくい大きなイボがあちこちに点在して外科治療をもってしても治すのが困難になってきます。
尖圭コンジローマと思しき症状を確認したら、早めに治療しましょう。
また、まれに悪性のHPVが紛れ込んでがんを発症するリスクがあります。ハイリスクHPVによって男性の場合は陰茎がん、女性の場合は子宮頸がんを引き起こしますので、悪性のHPVに感染していないか検査をしておくことが大切です。

尖圭コンジローマの診断と検査

病院で尖圭コンジローマを診てもらう場合、たいていの場合は専門の医師が視診を行うだけで診断できます。
ただし、イボが大きくなって多発している場合は良性HPVだけでなく悪性HPVが混じっている危険性もあるため、必要に応じて精密検査が行われます。

尖圭コンジローマの検査はイボの一部を採取し、遺伝子を調べるPCR検査や顕微鏡でイボの組織を調べる病理検査が行われます。
肛門周囲にイボがある場合は、内視鏡を使って肛門内部を調べる検査も並行して行われます。